IMG_3784の補正.jpg

なぜウニを陸上畜養するのか

 

“畜養ウニ”という新たな市場創造

天然国産ウニは旬の限られた漁期のみ水揚げされ、悪天候が続くとウニの供給量が減り価格が高騰します。また天然品ゆえ品質には個体差があり、極上品から粗悪品もあります。天然品に依存する飲食店はウニの品質、供給可能量、仕入価格が常に変動するので正確な仕入れ・販売計画を立てることが困難です。

海外輸入品を使えば国産ウニが出回らない時期でもウニ提供が可能ですが、輸入品は国産品に比べ鮮度が劣り、長時間の輸送に耐えるため苦味の原因にもなる保存料が使用されます。また安さが売りでもあった輸入品も価格高騰が続き、今や国産と変わらない価格帯で取引されています。

管理された陸上施設で畜養することで、鮮度良し!味良し!環境・地元に良し!の特産ウニを年間を通して安定供給することが可能となり、ウニを必要としている県内旅館、飲食店に貢献できます。

一般販売していないウニ畜養専用飼料を使える強み

ウニの旨味は餌によって決まります。北海道産ウニが評価される理由は旨味成分を豊富に含む昆布を食べて育つからです。大分うにファームが使用する飼料はウニノミクス社と三菱商事傘下の日本農産工業が独自開発し生産を行うウニ畜養専用飼料であり、知る限り唯一無二の産業規模で製造されているウニ畜養専用飼料です。主原料は、海藻の旨味成分と栄養が凝縮された、持続的な方法で収穫された食用昆布の端材。ホルモン剤、抗生物質、遺伝子組み換え、保存料、海洋資源枯渇や乱獲に関連する魚粉や、熱帯雨林伐採につながることが指摘されている大豆などの原料を一切使用しない、人と環境にやさしく安全な飼料です。

feed.jpg

深刻化する磯焼けで海藻類が海から消滅している中、餌のために昆布を刈り取り与えることは持続可能な水産とは言えません。また旨味成分を含まない廃棄野菜を与えても市場で評価される美味しいウニは育ちません。産業規模で採算の合うウニ畜養事業を可能にするのが、旨味成分と栄養が凝縮されたこの独自の飼料による成長の早さと食味のパフォーマンスです。食用としてあまり評価されないムラサキウニも給餌により、専門家が評価する味の商品に育て上げることができます。

陸上での閉鎖循環システムにこだわる理由

畜養ウニを採算が合う事業にするためには、天然ウニの旬以外の時期も安定した品質の商品を年間を通して生産することが不可欠です。それを可能にするのが、海面畜養ではなく陸上畜養の技術です。

自然界では海水温が上昇する春〜夏の時期に餌を多く食べ、秋以降の産卵期に備えてウニは成長します。産卵直前の身が一番肥えている短い時期のことを天然物の旬と言います。海面畜養では飼育する水温や環境は自然界と同じでコントロールできません。つまり出荷のタイミングは天然物と同じ一毛作だけとなります。その間に1年間分の飼料費、人件費に加え、赤潮、病気などによる斃死、台風などによる海面畜養設備の破損など様々なリスクが伴います。

大分うにファームが採用するのは管理の行き届く陸上施設での閉鎖循環システムです。海水温が下がり成長が鈍る冬の時期であっても、ウニの成長に適切な水温・水質に調整し、昆布の旨味と栄養が凝縮されたウニ畜養専用飼料を与えることで、美味しいウニを年間を通して畜養できます。これまでの実証試験結果に基づき、上記方法で飼育サイクル約6〜8週間、年間6期作を想定しています。

専用飼料と陸上畜養の技術を組み合わせることで畜養ウニ産業を創出し、これまでウニ産地としては無名であった大分県から世界のウニ市場に革命を起こす志です。

陸上での閉鎖循環システム詳細

日本では天然漁業に対して養殖生産は全体の2割程しかなく、その中でも海面養殖が中心です。一方、世界では天然から養殖へのシフトが進んでおり、2014年には初めて養殖生産量が天然漁獲量を超えました。ヨーロッパでは効率性や環境負荷の観点から海面から陸上養殖、とりわけ閉鎖循環システムへの移行が進み技術開発が進められてきました。

閉鎖循環システムは導入現場と育てる生物に合った飼育水槽の設計から始まり、水温・水質管理装置、各種ろ過装置など多岐に及ぶ装置個々の性能とそれぞれの相性を熟知した上で組み合わせることが必須です。技術面でのリスクを排除するため、ウニノミクス社と産業規模での陸上養殖水槽、閉鎖循環システムの設計・建設実績が豊富なノルウェー国立研究所「Nofima」、ノルウェー、オランダの大手水産技術企業「Cflow」、「Van Arkel Aquaculture Solutions」と提携し、陸上でのウニ畜養に特化したシステム全体設計・建設を実施しています。

大分うにファーム畜養施設